本年度の目標は、細孔閉塞技術の完成と熱分解による細孔径制御の検討である。閉塞技術では対向拡散CVD法を用いる。原料であるアルコキシドとしては、アルキルトリメトキシドの一つであるPropyltrimethoxysilane(PrTMOS)を用いた。PrTMOS/O_3系対向拡散CVD法により、多孔質アルミナ基材上へ蒸着を行った。まず、蒸着時のオゾン濃度の影響を検討した。蒸着は320℃にて行い、オゾン濃度は2.1mol m^<-3>および3.0mol m^<-3>にて検討を行った。オゾン濃度を3.0mol m^<-3>にて蒸着を行った膜のH_2透過率は、オゾン濃度を2.1mol ^<-3>にて作製した従来の膜の9.3倍となった。また、H_2/N_2、N_2/SF_6透過率比はそれぞれ12、240となり、透過率比を維持したまま、透過率を向上することに成功した。蒸着時のオゾン濃度を高くすることにより、蒸着するシリカ層が薄くなったためと推測される。この時、SF_6の透過率が10^<11>mol m^<-2>s^<-1>Pa^<-1>と測定限界に近い値となったことより、十分な閉塞を確認できたといえる。次に、150~400℃にて蒸着温度の検討を行った。N_2/SF_6透過率比は270℃蒸着のとき最大で770となり、H_2透過率は2.5×10^<-6>mol m^<-2>s^<-1>Pa^<-1>であった。蒸着温度におけるC_3H_6/C_3H_8透過率比はN_2/SF_6透過率比とともに増加し、270℃蒸着のとき最大で12.1となった。この値は最終目標よりは低いが、分離膜としてはチャンピオンデータである。そこで、320℃蒸着膜を用いてC_3H_6/C_3H_8の濃度を20~80mol%に変化させ、混合ガス透過試験を320℃にて行った。混合ガスのC_3H_6/C_3H_8透過率比は5.0~7.8であり、透過率比(5.0)と同程度であった。C_3H_6/C_3H_8透過率比はKnudsen拡散による透過率比(1.02)よりも高く、混合ガスの透過試験において濃度依存性が観察されなかったことより、コンセプト通り分子ふるいにより分離性能が発現しているといえる。
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