昨年度の実績報告書で記したように、シリカ源としてHexyltrimethoxysilane(HTMOS)の高温(300℃~500℃)蒸着により、さらなる高性能の膜開発の可能性を見いだした。本年度は最終年度であり、到達目標は、プロパン/プロピレンなどの飽和不飽和分離を行い、300℃程度の高温で、分離係数が100を超える膜の開発である。 Propyltrimethoxysilane (PrTMOS)、Phenyltrimethoxysilane (PhTMOS)、HTMOSを3種のシリカ源とし、対向拡散CVD法にて分子ふるいシリカ複合膜の作製を検討した。蒸着温度、蒸着時間が主な製膜パラメーターであった。PrTMOS、PhTMOSは、粉末分析でも示唆されたように、300℃以下の蒸着でN2/SF6透過率比が高くなる傾向が見られた。一方、HTMOSは、300℃以上の蒸着で選択性が高くなる傾向が見られた。これは、HTMOSの粉末分析により、450℃においても、ヘキシル基(の一部)が残存していることが示唆されたこととも対応していると考えられる。特に300℃以上の高温蒸着では、蒸着時間を短くすることで、選択性の高い膜が得られることを見いだした。300℃が重要な蒸着温度になることは、供給する酸化剤であるO3の分解挙動により説明される。300℃以下の蒸着では主たる反応種はO3であり、300℃以上の蒸着では主体反応種はO2であった。その結果、HTMOS系にて450 ℃ 、5 minで蒸着した膜は、270 ℃ 透過試験にて、プロパン/プロピレン過率比は414、プロパン透過率1.0×10-8 mol m-2 s-1 Pa-1と非常に高い高温プロピレン選択透過性を示した。この値は、到達目標の4倍以上であり、現在のチャンピオンデータである。
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