平成24年度はまず、反応溶液供給の周期的変動操作が触媒相界面の変動に及ぼす影響をCFDシミュレーションによって検討したところ、操作可能な実験条件では顕著な界面変動や圧力変動の傾向が見られなかった。そこで、種々のプロセス操作、触媒相の状態と反応性との間の関係に着目し、触媒としてポリエチレングリコールを用いた安息香酸フェニル生成実験を行うことで、触媒相の状態変化のモニタリングを効率よく行うための操作法ならびに操作条件について、以下の知見が得られた。 (1)触媒相の層構造と反応性との間の関係解析 反応操作前のフローインジェクション操作を用いた3相形成プロセスにおいて、2流体の供給操作条件によって異なる層構造を有する触媒相の形成挙動が見られた。さらに、攪拌レイノルズ数が約3250の攪拌条件下で行った回分式反応プロセス実験においては、触媒相の層構造の差異が塩化ベンゾイル消失反応挙動へ及ぼす影響は小さく、水酸化カリウム水溶液の濃度が高い条件の方が高い転化率が見られた。また、流通式反応プロセス実験においては、回分式反応プロセスに比べて触媒相界面の変動は小さく、2層構造の触媒相は低い転化率を示すという反応挙動が見られた。 (2) 交流電界操作下で形成された触媒相の反応挙動解析 触媒相の物性分析の結果、触媒相中の水分量ついては交流電界操作適用の有無に差異は見られなかった。しかし、交流電界操作を適用することで、より低い粘性の触媒相が形成されることがわかった。さらに、回分式反応プロセス実験において、交流電界操作の適用によって安息香酸フェニルの生成量(目的生成物の選択率)の向上が見られた。反応速度論的アプローチに基づく安息香酸フェニルの生成過程の解析を行った結果、交流電界操作適用による触媒相の状態変化が有機相-触媒相間の生成物の移動速度の向上に関係づけられると推察された。
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