研究概要 |
本研究は,固体廃棄物の主成分であるSiO_2-Al_2O_3-CaOスラグ融液と気相界面または溶融スラグ内における酸化鉛と炭素との還元反応,および酸化鉛と塩素,硫黄成分との塩化,硫化反応特性を調べ,溶融スラグからの鉛化合物の化学反応を伴う揮発ダイナミクスの解明を目的としている. 本年度はN_2,N_2-O_2,N_2-Hcl,N_2-H_2Sなどのガス雰囲気におけるCaO-SiO_2-Al_2O_3模擬溶融スラグからの鉛化合物の揮発特性を熱重量分析装置を用いて予備検討した.つぎに,本予備検討結果に基づいて1300-1500℃,N_2-O_2ガス流通条件下,高温電気加熱炉内におけるスラグ試料からの鉛化合物の揮発速度を測定した. その結果,N_2-O_2ガス流通条件下では,スラグ溶融場における鉛化合物の揮発速度はN_2-O_2混合ガス流速に大きく影響されることを認めた.さらに,ガス-溶融スラグ間の境膜抵抗を無視できる条件でCaO-SiO_2-Al_2O_3溶融スラグからのPbOの揮発速度を求め,各種溶融スラグからのPbOの見かけの揮発速度定数をスラグ種ごとに決定した.また,見かけの揮発速度定数は溶融スラグの粘度によって大きく異なり,溶融スラグ粘度が高い溶融スラグほど見かけのPbOの揮発速度定数は小さくなることを認めた.このとき,CaO含有量の大きい低粘度溶融スラグにおいてPbOの揮発速度は大きくなることが認められた. さらに,N_2,N_2-O_2,N_2-CO-CO_2雰囲気において,無機塩素系化合物(CaCl_2,NaCl,KCl)が共存する場合のCaO-SiO_2-Al_2O_3溶融スラグからの鉛化合物の揮発挙動を上記実験に準拠して調べた.その結果,これらの無塩素化合物が共存することによって溶融スラグからの鉛化合物の揮発速度は大きくなり,鉛はおもに蒸気圧の高いPbCl_2の形で揮発することを認めた.
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