燃料電池の普及には、燃料となる水素を安価で効率よく作り出すことが緊急な課題である。本研究では、低コスト、高効率な水素製造触媒を開発するために、水素製造触媒機能を有する貴金属不要なNi基金属間化合物箔の組成・組織設計の指針を確立する。この目的を達成するため、酸化物生成標準自由エネルギーの視点から安定的なNi基金属間化合物(Ni3X type)に着目し、それらの箔材の水素製造触媒特性を明らかにし、有望な組成・構造を見出す。さらに、有望なNi3Xに対し、複相ナノ組織化と表面ナノポーラス構造化により、触媒性能の向上を図る。 前年度は、Ni3Fe箔の作製およびメタノールから水素製造触媒特性を評価した。Ni3Fe箔はメタノール分解反応に触媒活性を示すことを見出した。当該年度では、放射光光電子分光、X線解析、電子顕微鏡によりNi3Fe箔触媒反応前後の表面のキャラクタリゼーションを行い、触媒活性の機構の解明を図った。その結果、メタノール分解反応中NiまたはFeの選択酸化が起こらず、Ni3Fe金属間化合物相は安定的に存在することが分かった。Ni3Fe相は触媒活性サイトになっている可能性を示唆した。さらに、表面処理と組織制御により箔表面のナノ構造を形成し、触媒特性の向上を試みた。
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