研究概要 |
本課題では、次世代高機能化固定化酵素バイオリアクターの構築のための基盤技術となる、固体表面親和性ペプチドを利用した、付着酵素分子の配向・構造制御が可能な精密制御固定化法の確立を最終目標としている。本年度は、酵素の精密制御固定化に適したシリカ表面親和性ペプチド群を、そのC末端に遺伝子工学的に連結したGlutathione S-transferase (GST)の多孔性シリカ粒子への付着特性について実験的検討を行った。すなわち、E. coli鞭毛ランダムペブチドライブラリーシステムを用いてスクリーニングされたシリカ表面に特異的親和性を示すペプチド(GlsX)、がGSTのC末端側が入るようにGlsX配列をコードするDNA断片をライゲーションし、各種ベクターpGEX-GlsXを構築した。構築したベクターを用いてE. coliBL21 (DE3)株を形質転換し、タンパク質を発現し、アフィニティークロマトグラフィーにより精製した。精製したGlsX連結酵素を用いて、粒径7nmのfumed silicaと粒径70nmのsilicon dioxideへの付着挙動を調べた。その結果、塩基性アミノ酸を4残基含む12アミノ酸残基からなるGls16連結GSTが直角平行型の不可逆的吸着平衡等温線を示すことが示された。一方,親和性ペプチドを連結していない野生型GSTは、吸着量と吸着力ともに低い値を示した。親和性ペプチドの吸着特性の違いについて基礎的な知見を得るため,分子動力学計算により吸着形態と吸着エネルギーを計算する方法を確立した。シリカ表面は,H-O-分子をO-(オーマイナス)を上向きに0.32nm間隔で271分子並べることによって構築し、モデルガラス表面の3nm上方にペプチド分子を置いた状態で分子シミュレーションを開始し,ペプチド分子を吸着させた。さらに、次年度に固定化のモデルタンパクとして使用するβ-ガラクトシダーゼの精製方法を磯立した。
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