研究概要 |
昨年度の研究でクローニングした分子量が約18万のB. circulans起源Beta-galactosidase(Gal-A)に着目して研究を進めた。配向制御固定化の対象タンパク質としてGal-Aと分子中に存在するガラクトオリゴ糖に特異的親和性を示すDS domainを取り上げた。先ず、これらのタンパク質の大量発現と精製条件を確立した。Gal-Aの配向制御固定化では、遺伝子工学的にN末端のみにタグを連結する方法では、既往の知見により、分子量が18万の巨大なタンパク質の固定化には十分な結合力が得られなことが考えられた。そこで、化学的方法により精製Gal-Aに親水性ポリスチレン特異的ペプチドタグ(mPS tag)を結合した。mPS tagは我々が見出した(Biotechnol. Prog., 22, 401(2006))PS tagのアミノ酸残基2つを置換した変異ペプチド(KRAFLASRRIRRP)である。先ず、mPS tagをグルタルアルデヒドで処理後にGal-Aに結合させた。結合により酵素の比活性は約40%に低下した。このmPS tag連結Gal-Aを、濃度を変えて細胞培養用の親水性96穴プレートの底面に固定化した。固定化後にウェルに基質(0.24%p-nitrophenyl beta-D-galactopyranoside)を添加し、恒温槽内の水面にプレートを設置し、37℃で反応を行った。一定時間後に、プレートから反応液を回収し、10%炭酸ナトリウム溶液に加え吸光度を420 nmで測定した。いずれの濃度の酵素溶液を用いた場合も固定化酵素の活性には大きな差は認められなかったことから、固定化に大過剰の酵素量が使用されたことが推定された。基質のみを交換して繰り返し反応を行ったところ、固定化酵素の活性は回数と共に緩やかに低下したが一定値に近づく傾向を示した。
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