研究課題/領域番号 |
22560774
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
今高 寛晃 兵庫県立大学, 大学院・工学研究科, 教授 (50201942)
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キーワード | セルフリー / ウイルス粒子 / RNAウイルス / 人工ウイルス / 試験管内合成 / 再構成 / ナノマテリアル / タンパク質合成 |
研究概要 |
本年度の目的は高純度のウイルスカプシドを調達し、試験管内でウイルス様粒子(VLP)を形成させることであった。以下のように2つのウイルス、脳心筋炎ウイルス(EMCV),E型肝炎ウイルス(HEV)を用いカプシド調達に成功した。 EMCV:カプシド領域His-L-1A-1B-1C-1DをBHK21細胞で発現させ、同時にカプシドを分断する酵素3Cも発現させた。BHK21細胞内で分断された1A-1B、1C、1Dが組み合わされ、EMCV-VLPができたと考えられた。そこでEMCV-VLPを精製する方法を確立した。具体的には、主な混在物であるリボソームを除くため、界面活性剤、ピューロマイシン処理、高濃度KClでの処理、RNase処理を行った。その後、ショ糖密度勾配遠心を行い、EMCV-VLPを精製し、透過型電子顕微鏡(TEM)でその形、大きさがEMCV粒子と酷似していることを確認した。 HEV:カプシドタンパク質ORF2(ORF2:N末112アミノ酸、C末55アミノ酸を欠失)を大腸菌あるいはBHK-21細胞で発現、精製し、試験管内でVLPを形成させることに成功した。この場合、N-末にヒスタグをコードさせてあるため、まず精製したORF2をニッケルカラムで精製し、続いて陰イオン交換体に通し、付着している可能性がある核酸を除いた。カルシウムを含んだバッファーで透析することにより、HEV-VLPを形成させ、ショ糖密度勾配遠心により精製した。TEMによる観察により粒子は直径30nmを持つものであることがわかった。N末を22アミノ酸欠失させたORF2も同様に精製した。しかし透析の後のショ糖密度勾配遠心においてはVLPの形成は確認できなかった。この場合N末にRNA結合領域を含むため、透析の際、HEV RNAを混在させるとRNAを含みHEV粒子の再構成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目的は高純度のウイルスカプシドを調達し、試験管内でウイルス様粒子(VLP)を形成させることであったが、2つのウイルス、脳心筋炎ウイルス(EMCV),E型肝炎ウイルス(HEV)を用いその目的を達成できたため。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度はウイルス粒子を工学的、医学的に応用するため、予定通りの計画を進める。研究を継続させるため、新学術流域研究において開発している再構成型翻訳システムを用いたウイルス粒子合成とタイアップさせるようにし、新たな科研費を得られるようにしたい。
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