現在、インフルエンザの迅速判定として使用されている方法(ELISA法:酵素を結合した抗体を利用した検出法)は感度不足のため感染しても陰性の判定(数10万個のウイスル数が必要)となる恐れがあり、さらに感染初期のウイルス数が少ないときは判定が困難である。申請者が開発した電解発光とイムノリポソームを組み合わせた手法はウイルスの高感度検出が可能であるが、安定性に問題がある。本研究では、数100粒子を安定に検出する手法を確立し、実用化を目的としている。最終年度の成果は以下のとおりである。 1.マイクロ電極の容量低減化:サンプルと電解液(0.1 Mトリエチルアミンを含むpH=7.4リン酸緩衝液)の混合比を最適化し、50μLの容量で測定できるようにした。 2.電解発光シグナルにおけるバックグランドの低減:本測定法は高感度であるため、様々な測定操作の影響を受け、バックグランドの上昇を生じ、測定精度の低下をもたらす。そのためには電極表面で安定な自己組織化膜(SAM)を作成することが重要である。SAMの材料であるジチオジプロピオン酸の溶液に極わずかな添加物を加えることによりSAMによる金電極表面の被覆率を大きく向上させる手法を見出し、バックグランドの減少を確認した。この電極を使用することにより大きな精度向上を確認した。 3.インフルエンザウイルスの数粒子検出:これまで検討した測定条件を用いてインフルエンザウイルスを測定すると数100粒子の確実な検出が可能であった。この要因は2のSAM被覆率の向上によるものである。 今後は実用化を視野に入れて試作機の作製を検討する予定である。
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