研究課題/領域番号 |
22560777
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
花方 信孝 独立行政法人物質・材料研究機構, ナノテクノロジー融合ステーション, ステーション長 (10302796)
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キーワード | CpGオリゴヌクレオチド / Toll-like receptor 9 / ドラッグデリバリー / シリコンナノ粒子 / サイトカイン |
研究概要 |
当該年度は、花粉症治療のための核酸医薬として有望なCpG ODN(メチル化されていないGC配列を含むオリゴDNA)を分解させずに樹状細胞内のToll-like receptor 9(TLR9)に運搬するためのナノキャリアについての研究を行った。 平均直径が3.4nmのシリコンナノ粒子を合成し、表面をアミノアリルで修飾することによってプラス電荷をもたせ、マイナス電荷をもつCpG ODNを静電的に結合させた。アミノアリル修飾シリコンナノ粒子は、量子ドットの性質を有し、UV照射により蛍光を発した。これを血液単核細胞(PBMC)に与えたところ、CpG ODNはシリコンナノ粒子からは遊離せず、ナノ粒子に結合した状態でTLR9と相互作用し、インターフェロンαを誘導した。一方、遊離のCpG ODNはインターロイキン6を誘導し、インターフェロンの産生は誘導しなかった。この結果から、ナノ粒子により、TLR9を介したサイトカイン誘導を制御できることが明らかとなった。 さらに、シリコンナノ粒子と結合したCpG ODNと遊離のCpG ODNを同時にPBMCに与えると、インターロイキン6を産生し、インターフェロンは産生しなかった。これらの結果から、CpG ODNは多分子が同時にTLR9に作用することでインターフェロン産生を誘導し、単分子で作用するとインターロイキン産生を誘導することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
前年度は、メソポーラスシリカナノ粒子による既存のCpGオリゴヌクレオチドを送達し、TLR9の活性化に及ぼす影響について検討した。今年度は、さらにサイズの小さいシリコンナノ粒子の合成を行い、かつ表面修飾を行うことによってCpGオリゴヌクレオチドをヒトの血液単核球細胞に作用させ、遊離のCpGオリゴヌクレオチドがIL-6を分泌するのに対し、シリコン粒子上のCpGオリゴヌクレオチドはIFN-αを分泌させることを見出した。シリコンナノ粒子によるサイトカイン生産の変換についてのメカニズムの解明も進んでおり、当初予定していない現象に対して、そのメカニズムまで解明できる可能性が高く、さらに当初の想定以上の応用展開が図れる可能性を示唆する結果が取得されている。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、最終年度となるため、CpGオリゴヌクレオチドの花粉症をはじめとする様々なアレルギー・免疫疾患に応用できるナノ粒子の開発を進め、その有効性を検証する特に、免疫刺激のためのCpGオリゴヌクレオチドのナノ粒子への最適な搭載方法が存在することが判明したので、その最適解を見出すことに注力する。
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