一様な流れの中に置かれた円柱の背後には規則的なカルマン渦列が形成されることは周知である。一方、NACA0012翼のような流線型でもその後縁近傍で小さな逆流領域が存在すると後流直後には、円柱と同様なカルマン渦列が形成され、渦周波数は極めて選択的である。この渦列形成に流れの絶対・全体不安定が関与していることは知られている。最近の研究協力者Itoh(2010)の複素特性理論を用いた解析によれば、その不安定の発生は、周波数ωの流れ方向xの変化が極値をとる位置、すなわち∂ω/∂x=0近傍であると予測している。三角柱と四角柱のように、その軸を回転させると主流に対して投影長さが異なるために、投影長に基づくストローハル数は一定とはならない。これは周波数が決定される位置が、模型の回転角で異なっていることを明確に示唆するものである。昨年度は柱体の後流特性について、特に後流渦の周波数と模型後流の平均速度分布に着目した。いずれの模型も一辺の長さが2.4mm、軸長が300mmの三角柱と四角柱の模型を用いた。その結果、速度分布の半値幅bの流れ方向分布の極小値をとる位置∂ω/∂x=dω/db・∂b/∂x=0は確かに模型の回転角で異なり、この位置における半値幅を代表長さとしてストローハル数を整理したところ、模型の形状と回転角に依らずほぼ0.19で一定であった。この結果は、研究協力者の理論を一部支持するもので、絶対・全体不安定は半値幅の極小値をとる位置近傍で起こっているものと推察される。しかし、この理論モデルでは、絶対・全体不安定は半値幅の極小値をとる位置と逆流が最大となる位置の中間領域を示しており、さらに詳細な実験が求められている。
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