『二次元頓頭物体の後流渦列の発生起源』を特定するため、NACA0006翼模型(最大厚t=2.4mm、翼弦長C=40mm、翼幅299mm)の迎角調整で、空間発展型の対流不安定と時間発展型の絶対不安定が支配する流れ場を任意に設定できることに成功した。模型の迎角を増すと翼の上面側の後縁近傍は逆圧力勾配が強まり境界層が剥がれて、逆流の強さに応じて不安定の切り替わりが行われる。具体例で示せば0.2C下流において熱線風速計で観察した速度変動のスペクトル結果を比較すると、迎角を2.2°から0.3°変化させただけで約280Hzの変動振幅は風洞の残留変動レベルである-76dBから-43dB、すなわち振幅比で45倍、さらに迎角0.1°増やすと残留レベルから630倍も増幅したことになる。このような変動の急激な増幅はこの観察位置近傍に絶対不安定点が存在していることを示唆している。この不安定点の絞り込みと平均速度や変動分布の詳細な熱線計測を行った。その結果、絶対不安定点を囲むように変動振幅や周波数の飛ぶU字型をした領域(曲線)が見だされた。このような飛びは、変動計測に用いる熱線プローブの侵襲で流れ場を乱すためであることも明らかとなった。今後、信頼性データ取得には、非侵襲計測が必須である。しかしこの効果を逆手に取ると、絶対不安定に起因した速度変動を抑制できることも明らかとなった。新しい渦抑制技術につながる可能性がある。一方、円柱では規則的な渦列が形成される100程度のレイノルズ数の流れの条件で、三角柱では模型直後では規則的な渦列が形成されるものの、代表長さの5-10倍程度下流で突然渦列が崩壊する現象が偶然観察された。流れの三次元性が疑われたため、流れの二次元性が確保できる石鹸膜装置(Soap-film tunnel)を新たに製作し、三角柱の後流特性を調べた結果、崩壊現象が観察された。
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