研究代表者は、人工衛星等の宇宙機システムの安全性・信頼性の向上を大局的な目標として、計算機によって膨大なテレメトリデータ(運用データ)から異常兆候を自動検知したり、異常原因の診断を支援するための知的データ処理技術の研究に取り組んできた。本研究課題の目的は、これら一連の研究成果を踏まえ、大規模宇宙機システムに付随する膨大なテレメトリデータや関連情報源から、運用者にとって有用な情報・知識を得るための様々なデータ解析・情報処理技術群を、「宇宙機テレメトリ情報学」という新たな方法論的枠組として体系化することである。研究初年度である平成22年度は、本研究における第1のサブテーマである「テレメトリデータへのアクセス法の体系化」を実施した。具体的には、膨大なテレメトリデータから解析に必要な部分を効率的に検索抽出する手段として、異種時系列データベース構築法、時系列類似パターン検索法の調査・検討・実装を行った。また、オリジナルの衛星テレメトリデータを、各種の知的情報処理技術の適用が容易な形式に変換する手段として、外れ値検知法および欠損値補完法を、データベース、時系列解析、パターン認識、信号処理の各分野の知見に基づいて検討・整理した。また、人工衛星に代表される動的な大規模複雑システムから得られる時系列センサーデータからシステムのモデルを学習する問題、「動的システム学習問題」について、機械学習および制御工学の両分野における最近の動向を調査・整理した。
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