本研究では、スマート構造の制御に必要な電力消費を大幅に低減する準能動型の制御システムを提案し、超高精度宇宙構造物への適用などスマート構造の応用可能な領域を拡大する。とくにエネルギ消費を抑えるスマート構造の準能動制御について研究し、宇宙アンテナなどの宇宙構造物の超精密制御にスマート構造システムを導入するための基礎研究として、宇宙スマート構造実現に貢献することを目的としている。本年度は以下の点についての研究計画を実施した。 1 .スライディングモード制御による準能動制御に関する理論的研究 本研究では、スライディングモード制御による切換え制御を考え、切換え面に沿ってシステムが原点に収束するようにスイッチングを行うことで、構造振動を制御する。その際に、機械エネルギから電気エネルギへの変換を最大にするように回路の切換えアルゴリズムを設計した。また、多モードの振動制御への拡張、複数の素子を用いる場合の配置の最適化についても検討した。 2. 圧電素子を用いた準能動制御実証実験 準能動型スマート構造の効果を実証するため、柔軟はりの側面に圧電素子を装着した柔軟はり(スマートビーム)振動実験装置を用いて実証のための予備実験を行った。共振回路を常時接続する受動制御と切換えを行う準能動制御の性能比較、能動型のフィードバック制御を行い、同一の制振性能達成に必要な電力消費を比較して、提案する準能動型制御のエネルギ効率を評価した。準能動型制御は、受動型制御に比べて減衰効果が高いが、スイッチング回路制御の他に、高インダクタンス素子に代わるシミュレーテッドインダクタ回路を必要とするため、外部からのエネルギ供給が必要となるので、この部分の消費電力を含めた検証が必要である。
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