平成23年度は、平成22年度に構築したパーティクル・フィルタ(粒子フィルタ)解析/シミュレーション環境(注1)を用いて、パーティクル・フィルタ理論を宇宙システムのロバスト制御に応用することの有効性の評価や妥当性の検証を行った。平成22年度に行った解析では、極めて簡素な数学モデルを用いて数値シミュレーションを実施したが、本年度は、最終的な制御対象をも視野に入れて数学モデルの詳細化を行い、エアロンチなど先進的ロケットシステムを想定して進めた。 研究の実施に当たっては、航空宇宙システムの制御の分野において、欧米でも最先端の研究活動を行っている米国・コロラド大学、およびスロベニア・リューブリァーナ大学と連携して、その協力を得ながら進めた。ともに、ロバスト制御の分野では欧米を代表する研究機関であり、本研究の遂行にあたって適切な協力と助言を得ることができた。具体的な共同研究の実施は、宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究所で行ったが、適宜両大学と研究打ち合わせを行うなどの方法も活用した。なお、旅費としては関連学会での学術調査を行うために使用した。 (注1)平成22年度には、研究の基礎を築くべく、パーティクル・フィルタ(粒子フィルタ)の概念を数学的に定式化し、宇宙システムの制御に適用するための解析環境を整えた。すなわち、パーティクル・フィルタを用いて、限られた観測情報(センサ出力)から状態量、および、制御対象の動特性を規定するパラメータ(システム・パラメータ)を推定するためのアルゴリズムを導出し、数値計算コードを構築した。これにより、単純な状態フィードバックにより制御器を構成する通常の線形制御理論と融合させることが可能な形式となった。
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