本研究は、冷凍空調分野でまだ十分な伝熱実験が行われていない炭素(HC)系冷媒、細管(管内径3mm~4mm程度)と船舶機関からの低温廃熱回収に利用可能な新型高効率プレート式熱交換器を用いて、凝縮・蒸発伝熱特性および圧力損失について実験を行い、冷凍空調機器や船舶機関システムへ適用可能な熱交換器の熱的設計、高性能化に資する知見を得ることを目的としている。1年目の本年度は、実験装置の製作、測定系統の構築(AD変換プログラムを含む)を行い、次いで温度・圧力・流量測定の検定、R410A冷媒の平滑細管・溝付細管の実験データの取得、安全性(可燃性冷媒洩れた場合)の防爆システムの構築を行った。また、実験データの取得の過程で予備実験による再現性の確認、実験範囲の決定を行い、本実験(再現性の確認を含む)で平滑細管および1種類の溝付細管の凝縮熱伝達特性および圧力損失について実験・解析を行った。その結果、管径、冷媒等の相違、これまでに提案した熱伝達および圧力損失の予測式の適用可否などについて以下の事項を明確にした。 1.平滑管、溝付管の熱伝達係数は、いずれの場合も冷媒質量速度の増加にともない高い値を示した。また、溝付管の熱伝達係数は平滑管に比較して約2倍高い値を示したが、質量速度の増加による熱伝達係数の増加の割合は平滑管に比較して小さい傾向を示した。 2.熱伝達係数と圧力損失について、宮良らの外径7mm平滑管の実験値と外径4mm平滑管の本実験値を比較した結果、同じ質量流量で熱伝達係数は外径4mm平滑管の方が約1.7~3倍高い値を示した。また、圧力損失は外径4mm平滑管の方が5.3~8倍大きい値を示した。 3.著者らが提案している外径6.35mm以上の伝熱管に適用可能な圧力損失の予測式と比較したところ、平滑管、溝付管ともに予測式の適用範囲内では実測値の方が高い値を示すが、平滑管ではGが970~1180kg/m^2sの範囲、溝付管ではGが750~850kg/m^2sの範囲で同様の値を示した。また、それ以上質量速度が高い領域では予測値が実験値よりも高い値となる傾向を示した。
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