気候変動枠組条約の規定に基づき国際海運についてはIMOにおいて温室効果ガスの削減対策が検討されている。しかし、ここでの検討は海上のみを対象とした検討であり、荷主の生産や保管といったサプライチェーン上の他の活動への影響については考慮されていない。 そこで本研究は、海上輸送サービスの変化が生産や販売に与える影響を考慮した上で温室効果ガス排出量の把握及びその削減策について検討する。 このため研究の初年度となる平成22年度は、主として自動車を対象に調達、生産、販売に至るサプライチェーン上の物資の流れを調査した。そして、海上輸送における輸送時間等のサービスの変化が、製品や部品等の在庫量と密接な関係にあることを確認した。特にA社のヒアリングからは大量の在庫を抱えることによる経費の増大が経営上の問題となっていることが明らかとなった。 そこで船舶の減速や減便が製品等の在庫量に与える影響をモデル化するだけでなく、在庫量と保管費の関係についてもモデル化した。 これにより、減速等の削減策について削減量だけでなく物流費用面を含めた総合的評価を可能とした。この評価の結果、削減策について次のことが明らかとなった。 多くの地域間において必要以上に大型の船舶が就航しており、環境面から見て望ましくないことが分かった。このことから船型の小型化が望ましい削減策と分かった。しかし、CO2排出量の削減効果は小さい。 また、減速の削減策はCO2排出量の削減効果が非常に大きいと分かった。しかし、隻数の増加を伴うために物流費用が増大し、特に船会社の負担が大きいことから船腹過剰の状態でなければ実行が困難であることが分かった。
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