研究概要 |
1.オンボードデータ解析のための確率統計モデルの構築と検証 多変量解析のひとつである独立成分分析とノンパラメトリック確率密度関数の理論に基づいて,短期海象中の船体運動,構造応力,主機作動点などの短期船体応答量の条件付き確率密度関数の構築を行った。実船で計測された実オンボードデータおよび航海シミュレーションで得られた擬似オンボードデータとの比較から,提案の確率統計モデルの検証を行い,短期船体応答量の相関関係を提案の確率統計モデルで説明できることを明らかにした。 2.条件付き確率密度関数の影響因子の解明 条件付き確率密度関数の条件が確率変数に与える影響の大きさを主成分負荷量分析により求め,オンボードデータ解析に必要な短期船体応答量を明らかにした。 3.確率モデル検証のための模型実験計画の立案 確率モデルの実験的検証と発展的課題の抽出を行うために,波浪特性を連続的に変化させながら,長時間にわたり船体応答(前進速度なし)の計測を行うための実験計画の立案・準備を行った。 4.実海域性能評価手法と運航支援手法の立案および試計算 提案の確率統計モデルの実海域性能評価と運航支援への応用として,遭遇海象から船速低下量の推定・予測を行う手法の提案を行った。実海域中の船速は主機回転数でおおむね決まるが,海象や海流の影響により,船速の低下やばらつきが現れる。実オンポードデータとの比較により,その低下量やばらつきを十分な精度で推定できることを示した。
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今後の研究の推進方策 |
運航条件が燃料消費量増加や船速低下に与える影響を検討する。具体的には,条件付き期待値として推定される燃料消費量増加や船速低下を,運航条件変数(主機回転数,船速,海象など)で微分することで求める。擬似オンボードデータ(航海シミュレーションで得られるオンボードデータ)にて手法の妥当性を検証し,実船オンボードデータ解析への適用を提案する。また,確率モデルの実験的検証と発展的課題の抽出を行うための模型実験を試みる。
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