研究概要 |
ばら積み貨物船の構造強度を正確に評価するためには,船倉内に作用する鉱石圧の推定精度を向上させ,作用荷重を正確に評価する必要がある。そのために、船倉模型を作製し,水圧試験,鉱石載荷試験,繰返し傾斜試験を行い,静的鉱石圧および動的鉱石圧を求め,個別要素法の検証データの取得,鉱石の挙動などについて調べた。 1、鉱石載荷試験に用いる船倉模型を作製した。その際,鉱石圧作用下における船体の弾性変形の影響を考慮するために,船倉モデルの寸法と変形の比率を実船の寸法と変形の比率を一致させた。 2、実際の鉱石の寸法,摩擦係数,かさ比重および安息角を実験により求めた。これにより個別要素法の解析パラメータを同定することができた。 3、船体の変形には有限要素法を用いて,鉱石の挙動は個別要素法を用いて両者を連成させて計算するプログラムの作成を行った。 4、水圧試験;鉱石載荷時の鉱石圧との比較を目的として,船倉モデルに水を張りひずみの計測を行った。水圧試験に対応する有限要素法解析を実施し,計算結果と計測結果が一致することを確認した。 5、鉱石載荷試験;静的鉱石圧作用時のひずみ計測を目的とし船倉模型に鉱石を充填し,模型の各部に生じるひずみの計測を実施した。実験によって計測されたひずみ計測値から有限要素法解析を介して船倉模型に作用している鉱石圧を推定し,船級ルールを用いて計算される鉱石圧と比較した。実験により推定された静的鉱石圧と船級ルールである鉱石圧算定式と比較して妥当な結果であることを確認した。 6、鉱石載荷後の船倉模型を繰返し傾斜させ,船倉模型に生じるひずみの計測,荷崩れや締め固まりによる鉱石圧の変化を調べた。その結果,鉱石特有の荷崩れや締め固まりといった挙動が鉱石圧に大きく影響を与えることを実験によって確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
個別要素法の解析パラメータである鉱石寸法,摩擦係数,かさ比重および安息角を計測することができた。さらに,鉱石特有の荷崩れや締め固まりといった挙動が鉱石圧に大きく影響することを実験的に確認することができ,個別要素法による数値計算検証用データを取得することができた。
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今後の研究の推進方策 |
実験により船倉モデルに生じるひずみを計測したが,このひずみを船倉モデルに作用する鉱石圧に換算する手法の確立が必要である。その方法として,水圧試験で計測されたひずみと鉱石載荷試験で計測されたひずみの比から鉱石圧を求める。または,有限要素法解析を介して鉱石圧を推定する。 計測した個別要素法のパラメータを用いて,構築した鉱石の挙動と船倉モデルの弾性変形との連成解析シミュレーションを実施し,計測結果との比較を行い連成解析手法の精度検証を行う。次に,構築した手法を用いて,船体横揺れ時の実船の船倉に働く動的鉱石圧を推定し,船体構造に作用する荷重を評価する。
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