ばら積み貨物船の構造強度を正確に評価するためには,船倉内に作用する鉱石圧の推定精度を向上させ,作用荷重を正確に評価する必要がある。前年度に引き続きアクリル製船倉模型に鉱石を積載して模型の各部に生じるひずみ計測を実施した。実験は鉱石載荷時の鉱石圧との比較を目的とした船倉模型に水を注入する水圧試験,鉱石載荷試験,鉱石載荷後の動揺試験を実施した。次に,試験で同定した実際の鉱石の物性値(鉱石の寸法,摩擦係数,かさ密度,安息角)等を用いて,鉱石の挙動,鉱石圧の変化を個別要素法を用いてシミュレーションを行なった。その結果,アクリル製模型では,周辺の温度変化により計測されるひずみ値が変化することが分かり,この影響を考慮してひずみ値を評価する必要があることが分かった。 個別要素法では円形粒子モデルを使用しているため粒子が回転しやすく実際の鉱石の挙動を再現することができない。粒子の回転を制御するために個別要素法に限界回転モーメントを導入して計算を行なう。計算において実験で得られた安息角を再現するための限界回転モーメントの大きさの同定を行なった。 個別要素法を適用して鉱石載荷試験のシミュレーションを行ない,これを実験結果と比較し計算手法の妥当性を検証した。実験による鉱石圧推定値は個別要素法の鉱石圧分布とほぼ一致することを確認した。 鉱石載荷後の動揺試験のシミュレーションでは,実験による鉱石の挙動を再現することができ,鉱石特有の荷崩れや締め固まり挙動が鉱石圧に大きく影響することがシミュレーションで確認することができた。 以上より本研究で構築した個別要素法を適用した鉱石圧の推定手法は実際の鉱石圧を推定する有用なツールとなりうることが確認できた。
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