研究概要 |
当研究では3段階の距離スケールで、富山湾の海潮流特性の把握のための観測を行っている。 まず、富山高専の練習船「若潮丸」(231GT)では、富山トラフ周囲における150kHzのADCP計測を行っている。2010,2011年度の夏季に、同様のルートでの観測航海により、能登半島の北東部と佐渡島の間の海域には、半径が約20~30海里程度の時計回りに流れる渦があることが確認された。この渦の存在は、人工衛星リモートセンシングデータによるクロロフィル分布画像、気象庁が行っている流れの計算シミュレーションの結果からも、高い相関性が確認された。 次に、「富山湾プロジェクト」では、富山高専が所有する実習艇「さざなみ」(16GT)により、基本的に,月一回の沿岸部の黒部と氷見を結んだ線より南方の9定点における観測航海が実施されている。この各点における観測内容は表面水温、透明度、海色等である。そして、CTDによる水深50mまでの計測を行い、同時に600kHzのADCPにより海潮流の流向及び流速を測定している。この観測により、沿岸表層水における、夏季の温度躍層、冬場の鉛直混合の様子が把握できた。そして、この水塊が変化する水深において、流れが変化する場合が多いことが観測されている。 上記観測はシステム化され、データ取得及び解析が進んでいるが、時間的に離散化されているため、連続的な変化をする海流や潮流の影響の明確な分離が困難な状況である。そこで、定点における連続観測システムの試作を行った。既製品の航行管制用ブイに、無線データ伝送装置と温度センサーを取り付け、この海底部に1200kHzのADCPを設置した。この実証基礎実験を3月下旬に行う予定であったが、3月11日の東日本大震災の影響で、ADCPが納入されずに、平成23年度に繰り越しとなった。このフィールド実験を5月に実施することができ、システムの基本的な稼働が確認できた。
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