練習船「若潮丸」では、富山トラフ周囲における150kHzのADCP計測を行っている。2012年度の観測航海では、湾奥部に半径が約10~20海里の反時計回りの渦があることが確認された。この渦の存在は、人工衛星リモートセンシングによるクロロフィル画像と高い相関性が確認された。そして、気象庁から提供された、海洋大循環モデルによる各深度層の計算値との比較を行った。ここでも、観測値と計算値との相関性が確認された。また、この計算値、ADCPと衛星リモートセンシングによる観測値から、表層から約20m深度までの、約0.1~0.2m/sの精度での、流向流速特性はほぼ一致していて、これは海流により支配されるもので、潮流の影響は非常に小さいものと思える。 次に、実習艇「さざなみ」による、沿岸部の黒部と氷見を結んだ線より南方の9定点における沿岸部での観測航海では、CTDによる水深50mまでの計測を行い、同時に600kHzのADCPにより海潮流の流向及び流速を測定している。ここで、約0.1~0.2m/s以下の速力レベルであるが、CTD観測による温度・塩分躍層の水深において、流向が顕著に変化しているのが確認されている。これは、河川水流入による影響が顕著であると思える。 そこで、1200kHzのADCPを、滑川、海老江、氷見の3箇所の海底に設置して、流れの変化の時系列的な観測を行った。結果として、潮汐に伴う流向変化が発生していた。また、約5~10m/s程度の風が吹くと、これに伴う吹走流が、表層から数m深まで発生していることが確認された。そして、河川水等の温度・塩分特性が異なる水塊が流入した際にも流れの変化が発生している。但し、これらの流速は、約0.1~0.2m/s以下の非常に弱いものであった。また、ブイに、無線データ伝送装置と温度・塩分センサーを取り付け、ADCPの海底設置時にデータ伝送を行った。
|