研究概要 |
岩石内部の間隙氷が凍結岩石の強度や破壊プロセスに与える影響を明らかにするため,岩質材料を用いて氷で充填された単一の巨視き裂を有する供試体を作製し,CCDカメラにより巨視き裂からの破壊の発生の様子を観察した。 一軸圧縮試験の観察より,圧縮応力下では岩質材料の強度により破壊プロセスが異なることが明らかになった。すなわち,強度が大きい供試体では,岩質部分に微少き裂が発生した後,間隙氷の破壊が進行するのに対し,強度の小さい供試体では,先に間隙氷の破壊が認められた。このことは,圧縮応力下における凍結岩石の破壊プロセスが岩石の強度により異なることを示唆している。また,前者の供試体では,まず,き裂先端付近に微小き裂が発生するが,このき裂の成長は停止し,その後の応力の増大によりき裂先端からせん断破壊が進行した。圧裂引張試験の観察では2通りの破壊プロセスが認められた。岩質部分と間隙氷の境界面が剥離した場合の強度は,き裂を氷で充填しない場合の強度とほぼ同じであるが,間隙氷を貫通するき裂が発生した場合の強度は,き裂を氷で充填しない場合の強度よりかなり大きくなった。これより,凍結岩石の引張強度は,岩石部分と氷の接合状態に依存すると考えられ,き裂面の粗さや屈曲性が高い岩石ほど,凍結による引張強度の増加は大きいものと予想される。 数値解析により両試験における応力状態を分析した結果,一軸圧縮試験より圧裂引張試験の方が,間隙氷の充填によるき裂先端の応力集中の緩和率が大きいことがわかった。間隙氷の影響が圧縮強度より引張強度の方に強く現れるのは,この応力緩和率の違いが原因であると考える。
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