研究概要 |
時間や含水条件などの環境に依存しない「絶対強度」と名づけた工学的に重要な強度の存在を明らかにするために,多孔質岩石の代表である凝灰岩を対象に一軸圧縮応力下でクリープ試験を実施し,クリープ応力とクリープ寿命の関係,クリープ変形・破壊プロセスの特徴などについて検討した。 その結果,凍結状態にある岩石も室温下におかれた岩石と同様に,1次クリープ,2次クリープ,3次クリープの3つの変形・破壊プロセスを経て最終破断にいたること,クリープ応力が小さくなるとクリープ寿命は指数関数的に長くなること,含水飽和状態で凍結させた供試体(含水飽和供試体)の方が自然乾燥状態で凍結させた供試体(乾燥供試体)よりも変形量・変形速度が大きくなることなどが明らかになった。しかし,予想した絶対強度より小さな応力レベルにおいても最終破断が起きることが複数個の供試体で確認され,少なくとも凝灰岩に関しては絶対強度の存在を明らかにすることはできなかった。ただし,凍結状態における岩石の長期強度について極めて重要な知見が得られた。すなわち,乾燥供試体に比べて含水飽和供試体の方が一軸圧縮強度は大きく,高い応力レベルでは,含水飽和供試体のクリープ寿命の方が長くなる。ところが,ある程度クリープ応力のレベルが小さくなると,含水飽和供試体のクリープ寿命の方が短くなるという現象を見い出した。このことは,間隙氷が岩石の力学的性質に与える影響は複雑であり,載荷速度や応力レベルにより異なる可能性があること,寒冷地における岩盤の長期安定性の評価には含水飽和状態で凍結した岩石の長期的な力学的性質を十分に考慮する必要があることなどを指摘している。
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