地下水利用型地中熱利用システムをわが国で効率的に導入するために、扇状地地域に特化して、その地域の地質構造や地下水流動を最大限に活用した最適設計パターンについて明らかにするのが本研究の目的である。そのために、平成22年度には以下の研究を実施して成果を得た。 【A.地下水循環装置の構築と各種計測】 扇状地地域において、薄い粘土層に挟まれた2層の帯水層が浅い深度に分布する地域を選定して、地下水循環装置を構築した。近接する2本の孔井を掘削し、浅部帯水層と深部帯水層からそれぞれの孔井で地下水を揚水(または還元)できるように設置した。この配置は、内部を二重管とした1本の孔井を用いて一方の帯水層から揚水しもう一方の帯水層に還元する方式を想定しており、検層機器の使用を容易とするためにあえて2本の孔井を水平距離で1m程度に近接させて設置するものである。掘削後には揚水試験等を実施した。その後、多深度に水位計と温度計を設置した。地上には揚水ポンプと温度制御装置を設置した。温度制御の方法は揚水した地下水をタンク内に貯え外気温に近づけることによって、冬季は温度低下をさせた。 【B.シミュレーションによる現地モデルの作成】 シミュレーションソフトWASY社製FEFLOW(現有物品)を用いて、地下水循環装置による地層中での水と熱の挙動について数値的に表現する現地モデルを作成した。なお、この段階では各地層の物性値等については一般的な値を用いた。 【C.同一帯水層を用いた地下水循環試験】 Aで構築した装置を用いて地下水循環試験を行った。初年度は冬季に、上部帯水層で揚水・還元を行う試験を実施して、揚水井・還元井・観測井の水位・温度の変化を観測した。
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