研究概要 |
本研究の目的は,高レベル放射性廃棄物処分場で緩衝材として使用する珪砂・ベントナイト混合体が,今後経験するかもしれない各種イベントで損傷を受けた場合に,緩衝材としての性能を維持できるかどうかを緻密に検証することである。緩衝材は,処分場操業開始から数万年の時間スケールにおいて,不飽和状態,飽和への過渡状態,そして完全飽和状態へと遷移してゆくが,ベントナイト特有の吸水膨潤性により,飽和状態に応じて緩衝材の力学特性は大きく異なる。この相違は,既往の地盤材料力学の枠組みを超えたものであり,現状では正確に評価する手法はない。本研究では,ミクロからマクロのマルチスケールな視点で実施する実験と数値解析を通して,不飽和ならびに飽和条件下での珪砂・ベントナイト混合体のせん断破壊時の損傷メカニズムを解明するとともに,損傷を受けた緩衝材の支持力性能,遮蔽性能などを評価することを試みる。 研究初年度の平成22年度は,不飽和および飽和状態の珪砂・ベントナイト混合体に対して一面せん断試験を実施することにより,せん断強度特性やダイレイタンシー特性を求めた。また,それと同時に損傷度合いを評価するために破壊挙動の観察も実施した。結果として,不飽和ベントナイトはせん断強度は大きいものの,脆性的な破壊挙動を呈し,損傷時には亀裂の発生を伴うなど,緩衝材の基本性能を損なう危険性があることがわかった。しかし,飽和度の増加により,せん断強度は低下するものの,延性的な破壊挙動にかわるために,遮水性能は維持されることがわかった。特に,せん断破壊後の供試体による,マイクロフォーカスX線CTの観察結果より,飽和状態の緩衝材であれば,せん断帯が存在する部分であっても,密度低下が無いことが示された。さらに,試験後供試体を用いた透水試験においても,遮水性の劣化が無いことが示された。
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