本研究の目的は,高レベル放射性廃棄物処分場で緩衝材として使用する珪砂・ベントナイト混合体が,今後経験するかもしれない各種イベントで損傷を受けた場合に,緩衝材としての性能を維持できるかどうかを検証することである。緩衝材は,処分場操業開始から数万年の時間スケールにおいて,不飽和状態,飽和への過渡状態,そして完全飽和状態へと遷移してゆくが,ベントナイト特有の吸水膨潤性により,飽和状態に応じて緩衝材の力学特性は大きく異なる。本研究では,ミクロからマクロのマルチスケールな視点で実施する実験と数値解析を通して,不飽和ならびに飽和条件下での珪砂・ベントナイト混合体のせん断破壊時の損傷メカニズムを解明するとともに,損傷を受けた緩衝材の支持力性能,遮蔽性能などを評価することを試みるものである。 最終年度の平成24年度においては,珪砂・ベントナイト混合体の圧縮成型供試体に対して,不飽和~飽和にかけた種々の含水条件下において非排気・非排水条件下での三軸試験を実施することにより,マクロスケールにおけるせん断強度特性やダイレイタンシー特性の把握を行った。その結果,珪砂・ベントナイト混合体は,飽和度が低い状態においては極めてせん断強度は大きくなるものの,複数のせん断帯を伴い脆性的な破壊挙動を呈することが示された。一方,飽和状態に近づくにつれて,せん断強度が急激に低下し,せん断帯が観察できない延性的な破壊挙動を呈することが示された。さらに,飽和状態の珪砂・ベントナイト供試体の一面せん断試験のシミュレーションを実施することにより,大変形を受けたせん断帯付近の密度変化が生じていないことをマルチスケールで示し,損傷後も緩衝材として性能が保たれる可能性が高いことを明らかとした。
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