本研究は,家電リサイクル工場において,風力選別機を用いて,廃棄被覆電線を粉砕した銅と塩ビの粉砕混合物から製品となる銅を回収する際の選別結果のモニタリングを行うシステムの構築を目的とした. 本研究では,前年度の成果として,直径6mmの銅と塩ビの球形疑似試料を,AE(Acoustic Emission)センサが取り付けられたセンサーヘッド(真鍮円盤)に落下させた際の衝突音を測定し,衝突音の測定波形より粒子の識別が可能であることを明らかにした. その結果をもとに,本年度は,実際のリサイクル工場より採取した銅被覆電線の粉砕試料より,銅と塩ビの粉砕粒子を取出し,擬似試料と同様の測定を行い,実際の粒子選別の可能性について検討した結果,以下のことが明らかとなった. ①銅と塩ビ粒子,それぞれ10個の離散フーリエ変換の結果を平均して求めた周波数特性は,衝突音の各周波数成分の強さを示す両粒子のパワースペクトルには重なる成分があるものの,塩ビ粒子は比較的低い周波数成分,銅粒子は高い周波数成分を有することがわかった.②両粒子のパワースペクトルの違いを明確にし,未知の衝突粒子が銅/塩ビのどちらの粒子かを判定するために,各パワースペクトルの正規化及び閾値処理を行い,各々の粒子固有の基準スペクトルを作成した.③各々10個の未知の銅/塩ビ粒子と各々の基準スペクトルを比較し,適応度を算出して判定した結果,銅粒子8個,塩ビ粒子10個が正しく判定された.④正しく判定された場合でも適応度が0.22と低い粒子もあった.⑤基準スペクトルと適応しないスペクトルはそれぞれが全く異なるわけではなく,幾つかのグループに分類され,実体顕微鏡を用いた粒子の観察より,粒子のスペクトルは粒子の形状に依存し,粒子の判定には,粒子形状の特徴量を考慮した粒子の分類と各分類に対応する基準スペクトルの生成が必要であることがわかった.
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