研究課題/領域番号 |
22560824
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
西村 新 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (60156099)
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キーワード | 中性子照射 / 臨界電流 / 臨界磁場 / 臨界温度 / Nb3Sn / Nb3Al / 磁化曲線 / 温度可変インサート |
研究概要 |
放射線管理区域内に導入した15.5T超伝導マグネットと温度可変インサートを用いて、Nb3Sn線材の臨界磁場-臨界温度関係を検討した。原子炉照射によって1.0x10^<22>n/m^2の中性子を照射した試料と未照射の試料ともに、測定した範囲内では臨界磁場-臨界温度の間にほぼ線形の関係が認められた。しかし、臨界磁場-臨界温度関係の傾きは、中性子照射した試料の方が大きくなり、外挿される4.2Kでの臨界磁場は中性子照射によって高くなるであろうことが示唆された。これは、照射欠陥が適度に導入されると、磁束のピン止め力が増し、より高い磁場においても超伝導電流が流れ続けることができるためと考えられる。一方、傾きが大きくなることにより臨界温度は低下する。4.3x10^<24>n/m^2照射した試料では超伝導を示さなくなることをすでに明らかにしており、照射欠陥の増加により、A15結晶構造の規則性が乱され、臨界温度が低下するものと考えられる。 1.0x10^<22>n/m~2照射した試料の高磁場での磁化測定を、管理区域内に設置されているSQUIDを用いて検討した。その結果、磁場が高くなるほど常伝導状態での反磁性特性が強くなり、また、中性子照射量が増加するほどその反磁性特性が顕著になることが明らかになった。この常伝導状態での反磁性は超伝導素線の構成材料である銅の影響によるものであると考えられる。超伝導状態へ移行後は緩やかに反磁性を示し、磁化特性から臨界温度を定義するのは容易ではない。 このように、Nb3Sn線材の超伝導特性に及ぼす中性子照射の効果は、照射欠陥の導入と結晶構造の規則性の乱れによって定性的に説明できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中性子照射実験が予定通り実施され、中性子照射したNb3Sn線材の臨界磁場、臨界温度の結果が得られつつある。実験手法そのものが不明確であったが、かなり精度良い実験が可能となり、実験効率も上がってきている。
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今後の研究の推進方策 |
これまで確立してきた実験手法によって、中性子照射材料の超伝導特性変化をより詳細に検討する。Nb3Al線材についても、できるだけその特性変化を明らかにし、超伝導特性変化の機構を説明できるようにする。
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