平成22年度は、核融合中性子源施設(FNS)にて、高いDT中性子フラックスを用いた実験ができ、DT中性:子によるゲイン変動の特性の取得ができた。実験では、光電子倍増管のデバイダーについて既存のデバイダー回路に加え、市販のアクティブデバイダーを用いた実験も行うことができた。得られた結果はどちらの方式でもほぼ同じでDT中性子フラックスの増加と線形の傾向をもって最大波高が減少した。さらに光電子倍増管の印可電圧を変化させて、印可電圧依存性のデータを取得したところ、印可電圧を下げると最大波高の減少は小さくなる。この波高の変動は波高の高いパルスに顕著にみられることから、デバイダー電流による電圧降下よりも、光電子倍増管の後段における空間電荷効果の可能性が高いと考えられる。また、1インチの有機シンチレータについて、絶対較正を行った結果、ガンマ線の混入が数%未満の設定ではDD中性子について0.1-0.15 count/neutronであった。これは、有機シンチレータの上限に近い。このため、一つの検出器での検出効率の現状からの大幅な向上は難しい。このような、結果を考慮すると核融合装置の実験でゲイン変動を押さえつつ、DD中性子とDT中性子の検出効率をあげるには、二つの検出器を直列に並べたタンデム式の検出器を開発するのがよいと考える。さらに、200MHz程度のサンプリング周波数で、弁別精度を向上させるパルス波形を得ることができるように、波形を50-150ns程度にする高速な波形整形回路の設計検討を行ったところ、既存の機器の改造で調達できた。この波形整形回路を通した信号は、弁別に必要な波形情報が維持されていた。時定数の増加とともに、弁別精度を向上させることができた。高い計数率との両立を考え、50ns程度の時定数を用いることとした。加えて、高速対数アンプの製作、及び、弁別プログラムの改良を行った。高速対数アンプの調整実験は平成23年度に実施する。
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