中性溶液中でのアクチノイドイオンの原子価変化の解明の一環として、弱酸性溶液でのウランの電解還元挙動を調べた。pH 1までの酸性溶液中では、6価ウランイオンの電解により還元生成する5価ウランイオンは不安定で、不均化反応により4価と6価イオンを生じる。溶液のpHがおよそ3の領域では、電解還元により生成する5価イオンは比較的安定に溶存するが、30分から1時間静置すると、凝集反応が急激に生じることが分かった。酸性度が低いpHがより大きな溶液中では、凝集反応の速度が大きく、5価イオンの生成と同時に凝集反応が観測される。 生成する凝集相の電極反応を調べたところ、pH 3から4の溶液中に生成する凝集相は金やカーボンの電極の表面に吸着しやすく、吸着したウラン凝集相は電極反応活性であり、酸化されやすいことが分かった。生成する凝集相のサイズは0.2μm以下と非常に小さく微粒子状で、生成後は凝集しにくい特徴を持つ。凝集相の結晶構造をX線回折分析により調べ、UO2と同じ蛍石型の結晶構造であると同定できた。 従来、非酸性溶液中では4価イオンは加水分解しやすく、水酸化物錯体を形成し、コロイドや沈殿を生じることが知られていた。そこで、4価イオンを含む酸性溶液を中和してpH 3の溶液として4価イオンの水酸化物錯体を調製し、電極反応を調べた。4価水酸化錯体も電極反応活性であるが、その電極反応は拡散律速であり、酸化電位はUO2凝集相に比べてより正電位であることが分かった。また、水酸化物コロイドあるいは凝集相は、溶液を静置することにより容易に凝集が進み、粒子サイズの大きな沈殿を生じる。 この様に同じ弱酸性溶液中に生成する4価のウランの凝集相であっても、その生成過程により組成の異なる化合物が存在し、これまで知られていない凝集反応が存在することを初めて明らかにできた。
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