ヘリウムビームを用いた飛行時間測定による弾性反跳粒子検出(TOF-ERDA)法による軽元素分析では、ヘリウムを軽元素に衝突させた際の断面積データが必要となる。本研究ではヘリウムビームを入射した際の窒素、酸素、ホウ素、リチウムの反跳断面積の測定を行う。平成22年度は、(1)イオン注入法を用いた窒素および酸素測定に用いるターゲットの作成、(2)作成したターゲットの組成分析、(3)窒素の断面積データ取得を行った。ターゲットは炭素基板(グラッシーカーボン、Nilaco)に50keVのN^+、および0^+イオンを注入することによって作成した。それぞれのイオンについて注入量がおよそ3×10^<17>cm^<-2>、1×10^<18>cm^<-2>の2種類のターゲットを作成した。作成したターゲットの窒素、および酸素含有量を評価するために2MeVのヘリウムビームを用いたラザフォード後方散乱(RBS)法による測定を行った。その結果、炭素基板に酸素が含まれており、これと注入された窒素あるいは酸素を分離できないため正確な含有量を求めることができないことが判明した。そこで、本年度はターゲットに厚さが200nmの窒化シリコン薄膜を用いて窒素の反跳断面積のみを測定することにした。窒化シリコン薄膜中の窒素含有量はRBS法によって求めた。断面積測定には若狭湾エネルギー研究センターのタンデム加速器を使用した。^4Heビームを窒化シリコン薄膜ターゲットに照射し、散乱されたヘリウムイオンを散乱角83.5゜に設置されたシリコン半導体検出器で検出した。ビームエネルギーを4.9~5.7MeVの間の10点に設定して測定を行った。反跳断面積は散乱断面積から運動学的計算によって求められた。この測定での^<14>Nの反跳角は40゜に相当する。反跳断面積は入射エネルギーが5.2MeVのときおよそ70mb/srであった。
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