申請者らは昨年度に引き続き、炭素資源バッチ式導入によるラボスケールでの直接光照射式流動層ガス化試験を、キセノンアーク灯擬似太陽光(放射束約3キロワット)により行った。前年度までに検討したソーラーガス化反応器では、揮発分(タール)含量の多い石炭・バイオマスをガス化させることが困難という問題が残されていたが、これは、①留出タールによる石炭流動性の低下と②採光窓へ付着する揮発タールのために反応器内の温度が上がりにくくなるためである。 そこでこれらの対策として、反応系内への石英砂導入を検討した。これは石炭等の流動媒体兼蓄熱媒体として作用して、タールが発生しても流動性を極力低下させないとともに、発生したタールがその中で長時間高温処理されることにより採光窓への付着量を減らすことを目論んだものである。予備実験として昨年度用いたものと同じドラフト管つきガス化反応器を用い、同条件でオールバッチ投入した石炭コークスの反応性を調べたところ、石英砂の一部がコーク内の灰分との作用により凝集するデメリットこそあったものの、重量比で3分の2程度の石英砂を混合させた石炭コークスについて光/化学エネルギー転換率10%→13%(最大)と著しい向上がみられた。さらにこの反応初速度は約2倍に増し、同じ反応時間で炭素転換率が60%→90%にアップした。これは、流動性向上に伴い熱が効果的にコークスへ伝わったためと考えられる。この反応初速度の著しい上昇は、いずれ工業的に行う際の採用に想定している石炭等連続投入システムにとって大きな利点となるだろう。 しかし一方で、揮発分の多い褐炭で行った同様の試験で反応槽内の温度を安定して高く保つことに成功しておらず、まだ満足にガス化が進行しない場合が多々あり、当初予定の石炭等を直接反応させるシステムの構築にいたっていない。向後は石炭等に効果的に熱を供与する工夫が求められる。
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