研究課題/領域番号 |
22560843
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
平野 聡 独立行政法人産業技術総合研究所, エネルギー技術研究部門, 研究グループ長 (60357861)
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キーワード | 結晶工学 / 表面・界面物性 / 過冷却 / 蓄熱 |
研究概要 |
エネルギー有効利用の観点から、物質の相変化を利用して高密度かつ高有効熱エネルギー効率で蓄熱可能な技術の重要性が高まっている。相変化蓄熱材の過冷却度を能動的に制御できれば、貯蔵された熱の抽出が需要に応じて可能な高効率蓄熱・熱利用システムを実現することができる。そこで、高融点の相変化蓄熱材候補物質の固液臨界半径を推定するとともに、微細構造が過冷却度に及ぼす影響を調べる実験を行った。 高融点の蓄熱材候補の有機化合物としてエリスリトール(融点118℃)、マンニトール(融点167℃)を取り上げ、融点、固液平衡温度、凝固開始温度、融解熱、粘性係数の温度依存性、系の分子数依存性等を測定し、固液界面自由エネルギーの推定と、均一核生成理論による固液臨界半径を推定した。固液界面自由エネルギーはTurnbullによる均一核生成頻度式から推定した。その結果、過冷却度1K~5Kまでの臨界核半径は、エリスリトールが110nm~20nm程度、マンニトールが140nm~30nm程度になるものと推定され、数十~数百ナノメートル程度のサイズにおける凝固特性が、これら物質の発核制御に有効であることがわかった。また、微細構造が相変化蓄熱材候補物質の過冷却度に及ぼす影響を調べるため、300~500nmピッチの回折格子を複数種用いて、燐酸水素ニナトリウム十二水和物(融点36℃)の凝固促進を試みたが、それら規則的構造物の単純な接触では明白な効果を観察するに至らなかった。 糖アルコールは給湯・暖房温度に適した安全な相変化蓄熱材として有望視されている。本研究結果は、カプセル型蓄熱材の最大過冷却度をナノオーダーの分子クラスタの発核によって制御できる可能性を示しており、相変化蓄熱材の過冷却制御、最適設計に有用な知見となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定に沿い、種々の蓄熱材候補物質の固液臨界半径を推定し、凝固制御に有効な微細構造のサイズを明らかにすることはできたが、過冷却度に及ぼす定性的な評価がまだできていない。
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今後の研究の推進方策 |
超音波振動や電場など従来から提案されている凝固促進手段も併用することで、微細構造が相変化蓄熱材候補物質の過冷却度に及ぼす影響を定量化し、制御効果を評価する。
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