研究課題/領域番号 |
22570004
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研究機関 | 城西大学 |
研究代表者 |
日比野 康英 城西大学, 薬学部, 教授 (10189805)
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研究分担者 |
岡崎 真理 城西大学, 薬学部, 准教授 (50272901)
神内 伸也 城西大学, 薬学部, 助教 (80433647)
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キーワード | ゲノム / 核マトリックス / エピジェネティクス / 酸化ストレス / クロマチン / ヒストン / P-糖蛋白質 / mdr1 gene |
研究概要 |
我々は、核マトリックスがゲノムの種々の機能を支える基盤として遺伝子の発現、特に生命現象の機能発現においてエピジェネティックな調節領域ではないかとの仮説を立証するため研究計画を立案した。本年度はP-糖タンパク質遺伝子に配置されたmatrix attachment region(MAR)領域のエピジェネティク解析とこれら領域と相互作用する因子群の同定を行った。 1.これまでに確立したin silicoの手法を用いて、平成22年度に同定したP-糖蛋白質遺伝子(mdr1b)の7ケ所の安定化(発現調節)領域(MAR)について、転写に関るトランス作動性因子群との相互作用をクロマチン免疫沈降法(ChIPアッセイ)により評価した。 2.P-糖タンパク質の発現刺激に酸化ストレスが有効であることから、細胞を過酸化水素処理して経時的に各MARの立体構造と修飾状態を調査すると同時に次の因子との相互作用を解析した(matrin3,SMRT1,MeCP2,TopoisomeraseII,hnRNP)。その結果、転写のオン/オフには、特定のMAR領域のメチル化/脱メチル化とともに特定のトランス作動性因子との間に明瞭な使い分けが認められた。 3.同様に我々が単離同定した核マトリックス蛋白質matrin3とMAR領域あるいはトランス作動性因子群との相互作用を、昨年度から継続して解析してきた。今年度は、特にプロモーター領域とエピジェネティックな制御下で相互作用するMARの情報を得た。現在、上記した因子に加えてアセチル化およびメチル化ヒストンとの相互作用も含めて解析中であり、MARとプロモーター領域との相互作用の情報が蓄積されている。 平成24年度も、以下の種々核タンパク質との相互作用をクロマチン免疫沈降法を用いて経時的に調査する計画であり、実験計画に基づいてデータを取得する。特に、matrin3との相互作用に重点を置いて実施することにしている。 今後使用する抗体 ・抗アセチル化H3,H4抗体(転写促進系)・抗メチル化H3リシン4抗体(転写促進系)・抗メチル化H3K9,H3K27抗体(転写抑制系)・抗リン酸化H3抗体(ゲノムストレス応答)・抗ユビキチン化H2A抗体(転写抑制系)・抗MeCP3抗体・その他、各マトリックスタンパク質に対する抗体
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトゲノム中のMAR領域の推定については、in silicoの手法が確立していることから、調査する遺伝子は順次解析することが可能である。しかし、すでにゲノムデータベースとMAR領域が推定できるプログラムが開発されたことにより、今後もin silicoのデータは入手できるものの、この推定値を利用して実測値(生化学的な実験データ)を取得するために時間と労力が裂かれているのが現状である。従って、この計画の進行が律速段階である。一方で、特定の遺伝子をターゲットとしたエピジェネティク解析は、順調に進めることができているために、おおむね計画通りに進行していると考えた。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の計画には「ヒトゲノムDNA配列中のMAR/SAR領域の同定」が含まれていたが、新規遺伝子の解析にほとんど着手することができなかった。しかし、P-糖タンパク質遺伝子に注目したエピジェネティクス解析が順調に進んでいることから、新たな遺伝子を用いた研究は実施しないこととして平成24年度は申請どおりの実験計画で進める。なお、平成23年度計画したものの実施できなかった項目については、初年度の平成22年度に得られた種々遺伝子のMAR/SAR領域の同定結果を利用して、新たな研究計画として継続申請して実施したいと考えている。
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