研究課題/領域番号 |
22570005
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
河村 富士夫 立教大学, 理学部, 教授 (10126039)
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キーワード | 枯草菌 / 胞子形成 / rRNA / リボソーム / rRNA分解 / ダイマーリボソーム |
研究概要 |
枯草菌の野生株を胞子形成培地にて培養し、対数増殖期(OD_<600>≒・0.2)と、胞子形成開始(To,OD_<600>≒1.2)から1、2、3、4、5、6、7、8時間後(T_1、T_2、T_3、T_4、T_5、T_6、T_7、T_8)の細胞を集め、これらの細胞をフレンチプレスにより破壊後、低速遠心して未破壊細胞と残渣を除いて調製した粗抽出液を用いて10%・40%ショ糖密度勾配超遠心法によりリボソームのプロファイルを求めた。その結果、胞子形成過程初期(T_1~T_2)に最もダイマーリボソームが多く形成され、その後胞子形成が進行するにつれてダイマーリボソームの量が減少し、消失していくことを見出した。次に、胞子形成過程To、T_1、T_2、T_3、T_4のダイマーリボソームからそれぞれrRNAを精製し、1.5%アガロースゲルで電気泳動を行い、胞子形成過程の進行に伴いダイマーリボソームの23SrRNA、16SrRNAが分解されることを明らかにした。rRNAの分解が始まる時期であるT_2のダイマーリボソームの16SrRNAに着目し、3'RACE解析を用いて16SrRNAの切断部位の解析を行った。その結果、データベース上の16SrRNAの5'末端から数えて1458番目~1461番目のUに富んだ領域で切断を受けていることが明らかとなった。σ_H破壊株におけるrRNAの分解を野生株と比較したところ、明らかな遅延が認められた。対数増殖期には70Sリボソームの状態で存在するが、胞子形成過程の初期には16SrRNAが切断されたダイマーリボソームが形成される。同時にσ_HによりYhcR、EndoA等の複数のRNaseが発現し、胞子形成過程の進行と共にrRNAが分解され、その結果母細胞のダイマーリボソームがすべて分解されて消失するものと考えられる。この際に生じたアミノ酸やリボヌクレオチドは母細胞における生合成の材料として利用されるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胞子形成過程の初期に形成された不活性なダイマーリボソームの16SrRNAの切断箇所を同定できたのは非常に幸運であり、大いなる前進であった。
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今後の研究の推進方策 |
16SrRNAの切断箇所の同定とその機能を知るために、切断箇所の欠失変異と塩基変異を導入した変異株を作成し、これらの胞子形成能や増殖能などの表現型とダイマーリボソームの形成能と16SrRNAのパターンを調べる。また胞子形成期初期に機能すると考えられるendoAをコードする遺伝子の欠失変異株の作成とその変異株におけるダイマーリボソーム形成能と16SrRNAの切断パターンを検証する。
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