研究概要 |
胞子形成期の初期に70Sリボソームが不活性化され, 次に休眠促進因子(Hibernation promoting factor, Hpf)によりダイマーリボソームが形成される.中期にはrRNAが切断・分解され始め, 胞子形成過程の進行につれ後期にはダイマーリボソームが分解され消失することを見出した. このhpf遺伝子は胞子形成開始に活性化されるシグマHとストレス応答時に活性化されるシグマBの2つのプロモーターを持ち, 胞子形成開始期には, hpfのシグマH依存のプロモーターから強く転写が誘導されていた. 栄養増殖期の細胞でHpfを過剰発現させても70Sリボソームのダイマーは形成されないことから, まず70Sリボソームが何らかの因子により不活性型70Sリボソームとなり, 次にHpfによりダイマーリボソームが形成されると考えられる. 胞子形成過程の進行に伴い母細胞で形成されたダイマーリボソームの16SrRNAが特異的な部位で切断され, 後期にはダイマーリボソームが分解される. これらの分解物は, 胞子形成期後期に大量に合成されるスポアコートタンパク質の合成に再利用されるものと考えられる. 一方, 非胞子形成培地(LB)の定常期の細胞において形成されるダイマーリボソームは, 胞子形成初期の細胞と異なり, ストレス応答時に活性化されるシグマBによりhpfの転写が行われていることを見出した. 従って, 胞子形成を開始しない定常期の細胞では, 既知の反応経路とは異なる経路でhpfの転写制御, つまりダイマーリボゾーム形成の制御, が行われていることが示唆された.
|