研究概要 |
種々のフリーラジカルやイオンは、核酸やその前駆体を酸化する。酸化反応により生じる損傷分子は多種存在するが、酸化型塩基8-oxo-Gを含むヌクレオチドにより突然変異や転写エラーが誘導される。この酸化損傷分子を分解する酵素群(MutT遺伝子族:MTH1,MTH2,NUDT5)は類似の活性を持ちつつ同時に、酸化ストレスに応答する多様な細胞機能に関わると考えられる。これらの酵素の性質を研究する過程において、我々はヒト蛋白質データベスより、配列の類似性を持つ酵素をさらにいくつか発見した。そのうちでもNUDT18と仮称されていた蛋白質の類似性が特に高かったので、この新規酵素について、大腸菌を用いた発現系を構築して、精製酵素の性状について、既知の3酵素(MTH1,MTH2,NUDT5)と比較しつつ検討しところ、本酵素も酸化型塩基8-oxo-Gを含むヌクレオチドを選択的に分解する基質特異性を持つ事が明らかになったのでMTH3と命名し、4つの酵素について更に詳細な解析を進めて以下の性質を明らかにした。 1)8-oxo-dGTPを分解するMTH1やMTH2とは異なり、MTH3は8-oxo-dGDPに特異性があり、その点でNUDT5に類似している。しかし生理的条件下の反応の性状から、NUDT5よりもMTH3の方が、細胞内での寄与がより高いであろうと考えられる。 2)同様に、8-oxo-dGTP分解酵素としてMTH2よりもMTH1の方が、細胞内での寄与がより高いであろうと考えられる。 3)RNA前駆体である酸化型塩基8-oxo-Gを含むリボヌクレオチドに対する分解活性の解析より、MTH1やMTH2が8-oxo-GTP分解酵素として、MTH3が8-oxo-GDP分解酵素として機能する事が明らかになった。
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