研究概要 |
本研究で対象としている生活史の異なる木本種2種(トチノキ,サワグルミ)について、生活史パラメーターの変動が個体群の増加率に与える影響を評価する個体群増加率の感度や弾力性を用いる方法について検討が加えられ、トチノキの生命表反応実験(LTRE)という手法を用いる解析をおこなった。また、自然撹乱パターンおよび繁殖スケジュールを組み込んだ数理モデルを開発し、サワグルミのセンサスデータを対象にして試算を行った。 それらの研究の結果,トチノキでは生命表反応実験によって,台風という自然撹乱が生息場所依存的に異なる影響をトチノキ集団に与えることや,集団動態の時空間的変動を反映する集団の維持機構、すなわち集団動態のKey stage, Key processが同定された。他の高木種のKey stage, Key processは多くの場合、成木の生存であるが、渓畔林樹種であるトチノキでは、集団動態のKey stage, Key processは幼植物の生長であることが明らかになった。この成果については、現在英文論文をPopulation Ecology 誌に投稿され、Major Revision後の査読を受けている。また、大型台風の頻度とマスティングの協同効果についてトチノキ、サワグルミ二種について、地形変化モデルを下部構造に持つシミュレーションプログラムが開発され、解析が行われた。その結果、トチノキはマスティングがなければ、個体群を維持できない種であること、サワグルミは現在の台風襲来頻度では、マスティング頻度が低くなっても集団を維持できることなどが明らかになった。これらの成果は、日本生態学会の学会発表において公表された。現在英文論文として投稿するために準備中である。
|