研究課題/領域番号 |
22570012
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
安田 弘法 山形大学, 農学部, 教授 (70202364)
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研究分担者 |
浦野 忠久 森林総合研究所, 森林昆虫, 主任研究員 (60353603)
齊藤 正一 山形県森林研究研修センター, 森林環境部, 森林環境部長 (80502583)
上野 満 山形県森林研究研修センター, 森林環境部, 専門研究員 (00502585)
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キーワード | カイガラムシ / 寄生蜂 / 温暖化 / 理論モデル |
研究概要 |
温暖化がもたらす影響は、生物によって異なる。この影響の相違は、生物間相互作用に働き、系の動態を変化させる可能性がある。このような現象は、寄主と、それに生活史を同期させている寄生者の間で起こりやすく、特に、寄主の特定の発育段階しか利用できない単食性の捕食寄生者に対して致命的に作用すると考えられる。現在、このような機構によって天敵寄生蜂の個体群成長が阻害され、寄主であるカイガラムシの大発生を引き起こしたと思われる事例が、東日本の里山地域を中心に起こっている。申請研究では、温暖化が種間相互作用に影響を与え害虫を大発生させる機構について考察し、理論研究と実証研究を組み合わせて解明することを目的としている。I.カツラマルカイガラムシと寄生蜂Pteroptrix sp.の基礎的な生活史特性の解明 1)温度が発育と生存に及ぼす影響の解明 カツラマルカイガラムシと寄生蜂の飼育系を確立する。その後、人工気象器を用いて20℃~28℃までの5段階の異なる温度条件を設定し、カイガラムシとその寄生蜂を飼育する。各条件における発育時間から発育ゼロ点T0と有効積算温度Kを求める。 2)増殖率・寄生率・性比の解明 各温度条件下でのカイガラムシと寄生蜂の増殖過程を解明する。ここでは、カツラマルカイガラムシの増殖率、寄生蜂の寿命と1雌あたり産卵数、性比などの生活史特性及び、寄生蜂の行動や寄主との遭遇率なども明らかにし、寄主と寄生蜂の種間相互作用の詳細を解明する。これらの基本的パラメーターにより、理論モデルによるシミュレーションの精度を高める。 II.カツラマルカイガラムシの理論モデルの構築 カツラマルカイガラムシの大発生における温暖化や寄生蜂の影響を解明するため理論モデルを作成し、パラメーターを操作して、大発生の機構を解明する。モデルは、矢野(1990)のレスリー行列モデルを骨格としたプログラミングモデルを採用する。このモデルは、個体群成長モデルに齢構成を組み込んだもので、齢に依存する増殖率や死亡率をもつ種の個体数変化を表現するのに適している。すなわち、時間的隠れ家などの発育段階における特性を扱う申請研究に都合がよい。しかし、レスリー行列モデルは、温度や日長によって次の齢へ移行する時間が変化する変温動物に対しては扱いが難しい。そこで、プログラミングを用いることよって、次の発育段階に進むまでの時間を温度や日長に従属させる。
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