ヤドリウメマツアリの社会寄生行動の至近的機構と進化機構について、以下の2つの見解が得られた。 (1) ホスト種の同巣メンバー認識機構に対する化学的擬態ヤドリウメマツアリの女王個体は、ホストであるウメマツアリのコロニーのワーカーと類似した体表炭化水素組成を示し、女王はこの認識物質をワーカーから高頻度でグルーミングを受けることによって獲得しており、またこのグルーミングを誘導する成分を持っていることが示唆された。しかし、卵や幼虫では、寄生種とホストの間でこうした成分自体があまり検出されなかった。 (2)ホスト種の寄生対抗性質操作実験の結果、ウメマツアリ長翅型女王コロニーでは、ヤドリウメマツアリの女王の導入成功率が低く、寄生種の侵入に対して抵抗性があると考えられる。一方、短翅型女王個体群のコロニーでは、導入成功率は高いものの、新成虫の羽化個体数は低かったため、養育による操作があると考えられる。化学分析の結果から、幼虫や卵では識別が困難であることが予測されるため、恐らくヤドリウメマツアリの女王の産卵自体を卵食などによって操作していると思われる。
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