1.ヤノクチナガオオアブラムシ-クロクサアリ系において、アリを随伴させて飼育したアブラムシと、アリ非随伴で飼育したアブラムシに対する、アリによる被食率を比較した。その結果、アリは巣仲間のアリに随伴されていたアブラムシを捕食しにくいことが判明した。さらに、これらのアブラムシ体表から抽出した体表面炭化水素(CHC)をガラスダミーに塗布してバイオアッセイを行った結果、アリ随伴区のアブラムシのCHCにはアリの攻撃を抑制する効果があった。これらの結果から、アリが、甘露を提供したアブラムシに自らのCHCを「マーキング物質」として付けることで、アブラムシを選択的に捕食していることを明らかにした。この結果をPopulation Bcology誌に発表した。 2.野外から採集したヤノクチナガオオアブラムシをアリ非随伴で飼育し、アリ由来の物質(マーキング)を排除してからCHCを抽出、分析した。これを、随伴していたクロクサアリのCBCと比較した結果、アブラムシ成虫は、アリのCHC成分と似た組成を持っていた。この結果から、アブラムシがアリに化学擬態している可能性が示唆された。 3.さらに、野外の3種のアリ(クロクサアリ、フシボソクサアリ、テラニシケアリ)のコロニーから採集したヤノクチナガオオアブラムシを、アリ非随伴で飼育し、アリの目印を排除した後にCHCを分析した。その結果、ヤノクチナガオオアブラムシはそれぞれに随伴していたアリに似たCHCを分泌していることが示唆された。
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