研究概要 |
本研究「生物様性および炭素収支の観点にたつ半自然草原の再生におよぼす野焼きの影響」は2010年度新規採択の課題であるため,印刷物などに公表された成果はほとんどない.2010年度の活動はおもに現地調査とデータ収集などに当てられた. 全国の野焼きはおもに1月下旬から4月下旬にかけて実施されるため,2010年度に野焼き時の温度環境測定が実施できたのは4月10日の蒜山高原と4月20日の小清水原生花園のみだった,その後は2011年に入り,1月に菅生沼と小貝川では測定できたが,大震災の影響により渡良瀬遊水地,秋田寒風山などは野焼きそのものが中止された. 植生調査などは小清水原生花園や寒風山で実施したが,寒風山は2010年度の野焼きが降雪により実施されなかったため,野焼きの影響を明らかにするようなデータの採取ができなかった. 種子関連の研究では,小清水原生花園で景観上問題視されているネナシカズラについて発芽実験をおこなった.本研究課題採択以前に土中に人為的に埋設してあった種子を掘り出して発芽率を調べたところ,5年間埋設の種子で約60%の発芽率があった. 炭素収支関係では,1回の野焼きで生産される炭の量をはかる必要があるため,野焼きに先立ち燃料の下部にステンレスシャーレを設置し,野焼き後にそれを回収して炭の量をはかろうとした.これまで正確な炭の量を測定することはできなかったが,近年ブラックカーボンという概念が導入されて,炭量の測定ができる可能性が出てきた.ブラックカーボンに詳しい研究者と議論の最中だが,サンプルだけは菅生沼の野焼きで採取できている.
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