研究概要 |
全国の野焼きは1月下旬から4月下旬にかけて実施され,とくに3月中旬から4月中旬のあいだに集中している.本研究が採択された2010年の野焼き調査は科研費によっての研究はできなかったので,本年度に野焼き時の調査を集中的に実施する計画だったが,2011年3月11日の東日本大震災後は消防士が救援で不在になり,多くの半自然草原野焼きが中止された.本研究の調査地に予定していた寒風山(秋田)や渡良瀬遊水地なども実施できなかった.また悪天候(降雨・降雪)により小清水原生花園(北海道)と霧ヶ峰(長野県)も中止になった.そのため,本年度は野焼き時の温度データは思うように集まらなかった 植生調査などは小清水原生花園,寒風山,霧ヶ峰などで実施したが,いずれの調査地も2011年度の野焼きが実施されなかったため,野焼きの影響を明らかにするようなデータの採取ができなかった. 小清水原生花園で景観上問題視されているネナシカズラについて発芽実験をおこなった.本研究課題採択以前に土中に人為的に埋設してあった種子を掘り出して発芽率を調べたところ,6年間埋設の種子で約70%の発芽率があった. 菅生沼(茨城)の調査地は放射能汚染の懸念により2011年度の野焼きは実施されなかったが,野焼きと刈り払い(草刈り)との植生への影響の違いを調べるための調査区を設置した. ここまでめ成果の一部を,樹木は火によって生育が抑制されるため火を入れると草原が成立するという観点から「樹木医学研究」に論文として発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
野焼き時の温度環境測定などは2011年3月11日の東日本大震災の影響により実施できなかったため,植生調査なども野焼きの影響を調べるという目的での実施はできなかった.その点では思うように調査が実施できなかったのも事実だが,野焼きが中止されたことにより,野焼きの影響を排除した植生での調査が実施できた.また,講演や講習会(たとえば日本生態学会自然再生講習会など)で草原野焼きと植生や植物との関係を話す機会があり,本研究の成果を市民に伝達できたと考えている.また,まだごく一部だが火が植生に与える影響についての論文発表もできたし,現在炭素収支関連の論文を執筆中で,アウトプットも順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
今年度に限っては2611年3月11日の東日本大震災の影響が非常に大きく,2011年春の野焼き中止だけにとどまらず,菅生沼や渡良瀬遊水池のように放射能拡散の懸念から2012年の野焼きも中止されるなど,研究を遂行する上で多少の障害となった.対応策として,火を排除した植生との比較を実施して,火の影響(効果)をより鮮明にさせるという方向での調査を実施している.2012年度の調査を実施してみないとわからない点もあるが,おそらく「当初の目的に沿った研究が進まない」と言うような大きな問題は生じないと予想している.
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