1. 火入れ時温度環境の測定: 東日本大震災の影響で野焼きが中止されていた地域でも2013年には再開された場所が多かった.このうち,小清水原生花園,大麻生公園(熊谷),菅生沼,小貝川河川敷で温度測定が実施できた.バラツキは大きいものの,地上では数100℃の温度に達しても,地表や地下ではほとんど温度上昇しないことを確認した.これにより,冬季または春季に火入れを実施しても,休眠中の植物が影響を受けることはほとんど無く,もとの植生が継続されることが推定された. 2. 火入れ後の植生: 小清水原生花園のエゾスカシユリは,野焼き直後に実生個体が急増するが,野焼きから2年目以降はほぼ一定の密度になる.一方,成熟した着花個体は火入れ当年でも密度を減らすことがなかった. 3. 火入れ地のフロラ: 秋田県男鹿市の寒風山における火入れ地を含む約200ヘクタールの調査範囲では,現在までに314種の植物の生育が確認され,このうち23種は国または県の絶滅危惧植物だった.小清水原生花園の野焼き地を含む約370ヘクタールに221種が生育し,このうち11種が国または道の絶滅危惧植物だった. 4. 草原構成種の発芽実験: 小清水原生花園で景観維持に悪影響のあるネナシカズラ種子は,地下に埋まってから8年を経過しても約7割の発芽率が維持された.一方,草原の代表的な種のひとつであるヒロハクサフジは,熱水処理をおこなうと発芽率が上昇することがわかったが,発芽率そのものは低く(10%程度),今後も発芽条件を変えての実験が必要である. 5. 炭素循環: 軽井沢三ツ石サイトで土壌呼吸調査を実施したが,まだ成果を出せるだけのデータを得ていない.
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