研究概要 |
本研究では,山火事が頻発する瀬戸内海地域において,ため池の堆積物に着目し,近過去の火事撹乱レジームが堆積物中の微粒炭シグナルとしてどう記録されているかを検証し,火事撹乱の指標としての微粒炭の堆積様式を解明することを目的とする.本年度は,以下の成果を得たので報告する 1)試料採取地の選定と堆積物試料の採取 広島県呉市音戸町および倉橋町,江田島市において,試料採取候補地の一部で表層底泥の堆積状況を調べた.このうち,倉橋町室尾の旧海軍省燃料置場(面積約600m^2),江田島市能美町の鹿川水源地(約2.8ha)および同町中町の上池(羅業用ため池)(約180m^2)で潜水による表層底泥の採取を行った.その結果,戦前から現在までの連続した不撹乱試料を得ることができた 2)史実資料などの収集・分析 史実資料などを収集・整理し,近過去の火事履歴,土地利用・景観構造の変遷などの分析作業に着手した.1960年以降の林野火事(焼失面積1ha以上)は30件を超える.焼失面積が数十haを超えない火事が大部分であるが,1978年6.月,江田島町宮ノ原では約1,000haの林野が焼失した.火事の間隔は平均2.7年であった 3)堆積物試料の年代測定,花粉分析および微粒炭分析 上池の試料(KAMI01)の花粉分析と微粒炭分析を行った.全層を通してマツ属複維管束亜属,スギ属,コナラ属コナラ亜属などが優勢で,アカメガシワ属,コナラ属アカガシ亜属などを随伴する花粉組成を示す.微粒炭濃度は10^1~10^2個/cm^3のオーダーで変動を繰り返した.化石燃料の高温燃焼に起因する球状炭化粒子も,特に中上層部で多数産出した.^<137>Cs-^<210>Pb法による年代測定は現在,業務委託中であるが,今後,試料の年代モデルを構築し,花粉化石と微粒炭の年間沈積量を算出して,それらと火事履歴との対応関係を明らかにしたい
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