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2011 年度 実績報告書

過去の火事攪乱を指標する微粒炭の堆積様式に関する基礎研究

研究課題

研究課題/領域番号 22570021
研究機関高知大学

研究代表者

三宅 尚  高知大学, 教育研究部・自然科学系, 准教授 (60294823)

キーワード火事攪乱レジーム / 花粉化石 / Cs-137,Pb210法 / 瀬戸内海 / 堆積様式 / ため池 / 微粒炭
研究概要

近年,火事が頻発する広島県江田島市の鹿川水源地と上池を対象として,それらの堆積物の^<210>Pb,^<137>Cs法による年代測定,微粒炭分析および花粉分析を行うとともに,史実統計資料などから近年の林野火災と植生景観を調べ,微粒炭・花粉沈積量の変勲と火事レジーム・植生景観の変遷を比較することで,過去の火事レジーム・植生の指標としての微粒炭・花粉が,堆積物中でどのように堆積しているかを検討した.
過去約30年間に江田島で発生した焼損面積1ha以上の林野火災は15件で,それらの多くは江田島の北部と南部で発生した.最も大規模な林野火災は1978年に江田島北部の古鷹山で発生し,その焼損面積は1,005haで,火災持続時間は44時間であった.それ以外の林野火災の規模は相対的に小さく,大部分の焼損面積は50ha未満であった.
年代測定の結果,鹿川水源地の堆積物は1940年代以降に,上池のそれは1970年代以降に堆積したと判断された.大微粒炭沈積量は,鹿川水源地では堆積物の最下部と中部に,上池では最下部と最上部にピークを形成していた.年代測定結果から判断すると,鹿川水源地の堆積物の中部と上池の最下部のピークは,古鷹山の大規模火災を反映していると推定される.それ以外の林野火災に対比される明瞭なピークは認められなかった.鹿川水源地の堆積物最下部のピークは第二次世界大戦終末に対比され,広島原爆投下あるいは江田島付近の空襲に伴う火災に起因する可能性がある.
花粉分析の結果,鹿川水源地ではマツ属複維管東亜属・アカメガシワ属→コナラ属アカガシ亜属・コナラ亜属,上池ではマツ属複維管東亜属→スギ属という組成的変化が認められた.これらの花粉組成の変化は,空中写真判読から推定された集水域とその周辺における植生景観の変化と対比でき,鹿川水源地ではその集水域でのアカマツ林からコナラ・アラカシ林への自動遷移を,上池周辺ではスギ人工林の造成を反映していると考えられる.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

試料採取地の選定,史実資料などの収集,^<210>Pb,^<137>Cs同位体分析に基づく堆積物の年代制御にやや困難を伴ったが,研究そのものは実施計画に沿って概ね順調に進展している.

今後の研究の推進方策

研究目的を達成すべく,当初の研究計画を基本としつつ,変更が必要な箇所については以下の対策のもとに研究を遂行する:
1)当初,呉市倉橋町を調査地としていたが,研究に適した試料採取地がより多く分布し,史実資料などが多く散逸の少ない,江田島市を主な調査地として硬究を推進する.
2)試料採取地の基本セッティングは,1)ため池の大きさと2)林野火災の攪乱地縁辺からの距離の組み合わせとしていたが,地点数の確保が難しかったため,2)を重視し堆積物試料の分析とデータ解析を進める.
3)広島原爆投下に伴う^<137>Csの降下と調査地の堆積盆への流入の可能性について検討する.

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2012 2011

すべて 学会発表 (6件)

  • [学会発表] Recent actual fire events and sedimentary charcoal records from irrigation ponds in the Edajima Island, Hiroshima Bay, southwestern Japan2012

    • 著者名/発表者名
      Miyake, N., Inao, H.
    • 学会等名
      The 5th EAFES International Congress
    • 発表場所
      Ryukoku University (Shiga Pref.)
    • 年月日
      2012-03-18
  • [学会発表] Lastglacial plant macrofossil assemblages below the Aira-Tn Tephra dominated by herbaceous plants in Shika, South Kyushu, Mlyazaki, Japan2012

    • 著者名/発表者名
      Sugiura, M., et al.(+6 co-researchers, 4th)
    • 学会等名
      The 5th EAFES International Congress
    • 発表場所
      Ryukoku University (Shiga Pref.)
    • 年月日
      2012-03-18
  • [学会発表] 宮崎県都城市四家の草本が卓越する姶良Tnテフラ直下の植物化石群2011

    • 著者名/発表者名
      杉浦真琴, ほか6名(4番目)
    • 学会等名
      第26回日本植生史学会大会
    • 発表場所
      弘前大学(青森県)
    • 年月日
      2011-11-06
  • [学会発表] Reappraisal for natural impact on decline and fall of the Indus Civilization2011

    • 著者名/発表者名
      Maemoku, H.(+12 co-researchers, 6th)
    • 学会等名
      The 18th INQUA Congress
    • 発表場所
      BERNEXPO 2 (Bern, Svitzerland)
    • 年月日
      2011-07-25
  • [学会発表] Inland temperate tree refugia in LGM in central Japan based on plant macrofossil records and its significance for the rapid expansion of temperate forest with high species diversity2011

    • 著者名/発表者名
      Momohara, A., Miyake, N., Kudo, Y.
    • 学会等名
      The 18th INQUA Congress
    • 発表場所
      BERNEXPO 2 (Bern, Switzerland)
    • 年月日
      2011-07-23
  • [学会発表] ネパール西部,ララ湖周辺における完新世中期以降の植生変遷と火事2011

    • 著者名/発表者名
      三宅尚, ほか9名
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2011年大会
    • 発表場所
      幕張メッセ(千葉県)
    • 年月日
      2011-05-24

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公開日: 2013-06-26  

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