研究課題
基盤研究(C)
理論によって、保育を行う動物では親子間の利害対立の存在が示されている。親は自分の適応度を最大にするように子への投資配分を決定しようとし、子は自分への適応度を最大にするためにベギングなどを利用して親を操作しようとする。このような親子間の利害対立は、進化的解決へのプロセスをたどりながら、親の保育形質と子の対応する形質に一定の共適応が生じると言われている。しかし、親の保育形質と子の対応形質の遺伝変異についての情報はまだほとんど得られていない。そこで本研究では、亜社会性を持つフタボシツチカメムシの室内個体群の選抜系統によって、親の投資形質と子のベギング形質の遺伝変異を確認し、各形質の遺伝率を推定し、両者の遺伝相関の存在を証明することを目的とした。そして実験室個体群に対する栄養卵量の正負両方向への選抜を繰り返し、栄養卵量の実現遺伝率の推定、ベギング形質の定量化、孵化後栄養卵量とベギング形質の遺伝相関の検出を試みた。しかし残念ながら、各形質の有意な平均値変化を検出できなかった。当初、選抜実験に使う予定であった野外個体群が絶滅したため、研究室内で50世代を超えて累代飼育している個体群を選抜実験に用いた。おそらく室内個体群では近親交配が続いた結果、遺伝的に均一化が起こっていたのではないかと考えられる。そこで表現型レベルでの保育様式の適応性を検討するため、保育の親にとってのコストー利益を測定し、いくつかの保育形質間のトレードオフを調べ、一定の成果を得た。
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