研究概要 |
現在,我が国のジュゴンは沖縄島北部の東海岸を中心に目視情報が報告されているが,その生息数は非常に限られておりその保全が求められている.しかしながら,琉球列島のジュゴンに関する知見は少なくより効果的な保全対策を検討するための科学的知見はほとんど存在しない.本種のように広い生息範囲を有する海生哺乳類の個体群構造・動態および個体群間の関係を推察する上で,形態学的変異や遺伝情報を利用した解析は有効な方法のひとつである.しかし,琉球列島のジュゴンに関しては,これまで個体群解析は行われておらず,その個体群構成,遺伝的多様度などに関する知見は非常に乏しい.そこで本研究では,琉球列島内の新城島において保存されているジュゴンの頭骨を用い形態学および分子系統学的検討を行い琉球列島および周辺のジュゴン個体群間の関係性と遺伝学的特性を明らかにするとすることを目的とした 初年度である22年度では,琉球列島内の沖縄島および新城島において回収されたジュゴンの骨を用い分子系統学的検討を行うためのサンプリングを行った.60個体余りより採集された試料からの微量DNAの抽出とPCR法による最適な増幅条件の決定を試みた.その結果,新城島より得られた骨では大部分の試料からの増幅に成功した.加えて,琉球列島のジュゴンの形態的特徴を明らかとするため,比較対象としてロンドン自然史博物館およびパリ自然史博物館に収蔵されているアフリカ,中近東,アジア地域より得られたジュゴンの頭骨の形態学的な調査を行った
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