「クローナル植物では、ジェネットの空間配置により個体群のバイオマスや個体内での物質分配様式が大きく変化する」を仮説として提唱し、その仮説の実験生態学的な検討を行った。 地上茎と根からなるラメットと呼ばれる植物体が、地下茎や旬旬枝などの器官を介した栄養繁殖により複数連結する植物を総称してクローナル植物という。クローナル植物では、その構造から、隣り合わせに存在するラメットが同一の遺伝的なクローン(ジェネット)に属する場合もあれば、異なるジェネットに属する場合もある。 もし、隣り合わせに存在するラメットが同一のジェネットに属するのであれば、過度の競争はそのジェネットの適応度を低下させる。そのため、『協調的』な挙動が予測されうる。一方で、隣に存在するラメットが自分とは異なるジェネットに属するのであれば、『協調的』な振る舞いは、自身の適応度を下げる可能性がある。 次年度以降の実験に用いる植物種を栽培実験によりスクリーニングした。スクリーニングでは、ビニールハウスで栽培でき、容易に栄養繁殖し、移植につよく地下茎・葡匐枝が成育中に切れにくい種を選別した。候補種は、アカツメクサ(Trifolium pratens)、ホソムギ(Lolium perenne)、イタドリ(Fallopia japonicaa)、シロツメクサ(Trifolium repens)、ギョウギシバ(Cynodon dactylon)、オニシバ(Zoysia macrostachya)、コウボウムギ(Carex kobomugi)、カキドオシ(Glechoma hederacea var. grandis)、ドクダミ(Houttuynia cordata)、などであった。その結果、ホソムギ、イタドリ、シロツメクサ、ギョウギシバ、オニシバ、カキドオシが実験の候補種として選定された。
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